聴かない音楽を聞いてみる

 いわゆるサブスクの普及により音楽も好きなだけ聞くことができるようになってきました。これだけ曲が聞けるとなると何を聞きたくなるか迷うかもしれません。たしかにユーザーの好みに合わせておすすめの曲をサジェストしてくれる機能などがあるので、選ぶのがめんどくさいときにはそれを頼りに聞くのもいいかもしれません。けれど、サジェストされる曲はちゃんと好みにあっているぶんなにか物足りなさがあったりしないでしょうか。そこでおすすめなのはラジオです。今ではアプリを使ってラジオを聞くこともできるので適当に合わせた番組なのになんとなく耳を澄ませていると全く知らない曲が流れてくることがあります。あとはその曲から芋づる式に検索をかけてみるのもよいかもしれませんね。

図書館で知らない本を読んで見る

 読書もオンラインとは無縁ではいられません。ネット通販や電子書籍も今ではもう当たり前ですよね。そうした環境のなかで悩むのは「どんな本を読んだらいいんだろう」ということでしょう。意外なことにある程度読書習慣がある人ほどこういう悩みを抱きがちです。お気に入りの作家がいる、学生の頃から読んでいるシリーズがある、などなど。本屋でジャケット買いをしてみるのもアリですが、やはり読んでみて自分向きじゃなかったーという感想になると悲しいですよね。そこでおすすめなのが図書館。大きめの図書館なら意外と新しい本もあったり、今では本屋にないような古い本もあったりします。ここで重要なのはできるだけ立ち読みをしないで本を借りてみること。家に帰って読み始めると「なんか違う」と思うかもしれませんが、大事なのはとりあえず読みすすめてみることです。偶然手にとった本を「これもなにかの緑だ」と読むことで広がる世界があるかもしれません。

何も持たずに散歩をしてみる

 基本的にわれわれはいろんなものに囚われている。たとえばいつでもネットに接続できるスマホは便利だが、いつでも接続できるがゆえに今調べなくてもいい情報や広告が気になってしまうということがある。スマホを見るという能動的な行為がいつのまにか単なる広告を見ているだけの受け身の状態になっているかもしれない。こうなるとスマホを一時的に手放して外出するというのも一つの手であると思われるかもしれない。しかし、緊急時の連絡が取れないというのはなかなか不便なこともある。そこでおすすめなのはスマホをポケットなどすぐ取り出せるところではなく、かばんの奥底や充電器やケーブルなどと一緒にポーチに入れてしまうことだろう。こうすることで「とりあえずスマホを見る」ということがなくなるし、新しく見つけたお店に入るときにも下調べすることもなくなる。最初は不安かもしれないが意外と慣れると楽しいかもしれません。

ラジオを聞いてみる

 上記にも書いたがラジオを聞くというのも気分転換にはぴったりだ。できれば地元のことを伝えてくれるラジオを聞くのがよい。ほどよい距離感の情報がインターネットによる加速気味な情報の洪水を浴びているときとは違う気分を与えてくれる。そしてラジオは音がとても豊かだ。番組はもちろん、ジングル、ラジオ CM とそれぞれ異なる色合いの音を流してくれる。スマホや PC で疲れがちな目を休めてラジオに浸る。目から耳へと情報のアンテナを変えてみるのである。

サジェストからランダムなものへ

 結論から言うと今回の記事の趣旨は音楽、本、散歩をランダムにするという一言でまとめられるであろう。もちろん、サジェストはかなり強力な機能だ。私自身の経験でも AppleMusic のおすすめしている曲や Amazon がすすめる本が「まさに私が求めているものだった！」となることが多い。むしろこうしたおすすめ機能に身を委ねるほうが私自身の幸福度合いが高まるといっても過言ではないであろう。

 しかしながら、ささやかな反逆を試みたくなるのも人間である。いつも右に曲がる道を左に曲がるように、Amazon や AppleMusic が絶対におすすめしない曲を聴き、本を読むという抵抗である。この抵抗にこそ自由があるとまでは言わないが、おそらくわれわれの幸福を形作るものは決して満足感であったり、「よいもの」を与えられてそれを受け取るということだけではないであろう。自分で吟味して選ぶというプロセスが必要なのである。とはいえ、できることは限られている。本や曲が物理的な媒体で取引される世界が終わるのはそう遠くない。そしてわれわれが「おすすめ」されるのは本や曲だけでなく「生き方」にまで及ぶであろう。そうした世界が訪れることを見越しての「ランダム」の練習なのである。